日月警備保障の6億円強奪事件で考えたこと

今年5月に発生した6億円強の強奪事件。
郵便現金輸送を請け負っていた警備会社の事務所から現金が盗まれるという、一般人なら耳を疑うような、警備業の関係者にとってはおそらくシャレにならないような事件であった。

駅やコンビニに置かれているATMの現金の出し入れだって、商店の売上金の回収だって、警備会社がやっている。
ただでさえ狙われやすい多額の現金であるから、万一に備えて警備会社に輸送を依頼するのである。
その警備会社の営業所が襲われて、まんまと6億円も盗まれてしまった。
現金輸送を本当にこの警備会社に委託してよいのか、金融業界に限らない広範囲に不安を抱かせた事件だったことは想像に難くない。

「そんなニュースもあったねー」と記憶も薄れ掛けていたつい先日、今の仕事で同じ案件を一緒にやっている人との雑談の中で「学生時代にあの日月警備でバイトしててさ…」という話を聞いた。
何でも、警備で人が足りなくなると「その日に手が空いてそうな友達いたら呼んでよ」と社内の警備員にお願いしていたのだという。
しかも、友達を呼べば紹介料(?)をその警備員に支払っていたとのこと。

「それって(警備)業法違反じゃ…」
「分かってるけど、紹介料もらえるとなればやっぱり友達誘っちゃうよね」

一定時間の講習を受けないと警備員として業務を行うことはできないというような縛りが、警備業法にあった。
街中の路上で交通誘導やってるにいちゃんも、線路の脇で黄色い手旗を揚げてるおじちゃんも、ビルの建築現場で工事車両の誘導やってるおばちゃんも、みんな規定の講習を定期的に受けて警備員としての資格をクリアしている人たちなのである。
この講習を受けていない人は警備員として業務を行ってはいけないことになっている。
が、日月警備保障では(10年以上前の話ではあるが)日雇いの学生に警備員の格好をさせて警備につかせることが日常茶飯事であった。そんな話だった。

警備員の給料は安い。はっきりいって現場によっては最低労働賃金ギリギリの給料だったりする。
しかも、それは警備会社がピンはねしている儲けているわけではなくて、そもそも警備業に対する発注価格が安いという根本的な問題があったりもする。
そんな状況で大量の余剰人員を抱える体力が警備会社にあるわけもなく、かといって大量動員が必要となるような大規模イベントという案件を見逃すわけにもいかず。
受注してしまったイベント警備に対応するためには、全警備員を動員するばかりではなく、付き合いのある別の警備会社にも応援を頼むなどして対応するのが常である。
それでも人手が足りないからといって、警備員の資格がない(教育を受けていない)人間を警備につかせてしまった、いわば一線を越えてしまった(しかもそれがずっと前から常態化していた)のが日月警備保障だったのかもしれない。

工事現場で見かける警備員の制服は大抵は聞いたこともないような警備会社のものである。
土日のサッカーの試合や花火大会などのイベントで警備をしているおっちゃんたちは、月~金は建設現場でトラックの誘導をしている人たちかもしれない。
イベントの多い夏は、警備員にとっては消耗する一方の地獄である。
決してかきいれどきなどではない。拘束時間に対する給料は安いから。

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余談ではあるが、以前に日月ではない某警備会社でアルバイトをしていたことがある。
イベント会場への移動のために警備員を満員に詰め込んだワンボックス車をいきなり運転させられたりして、帰りの東名高速なんかははっきり言って(居眠りして事故って死ぬんじゃないかという意味で)辛かった。
そんな警備会社をやめて、社会人として仕事していたある日、その警備会社の司令室から電話がかかってきたことがある。
「以前こちらでお仕事していただいていたかと思うのですが、来週の日曜日に警備のお仕事で来ていただけないでしょうか」
辞めてから1年以上経っているので警備業法的にNGだと思いますが、と言ってその時は電話を切った。
規模は小さくても法令順守という点ではしっかりとしていた会社だと思っていた。
こんな話、日月警備保障に限らず、中小の警備会社ではよくある話なのかもしれない。
表沙汰にならないのは、警備会社の上層部は警察と付き合いが深いからなのだろうな。

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